草生人バックナンバーテキスト

草加のすごい企業:2013年秋号

草加の産業の今と昔~小俣克彦さんに聞く

小俣克彦さん
草加商工会議所 常議員・街づくり委員長
東京製鎖株式会社 代表取締役

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草加の河川が産業や街の形成に関わった

 草加の産業について草加商工会議所常議員で街づくり委員長の小俣克彦さんにお話を伺った。
 草加市は工業の街という顔も有している。工業都市は海に面しているのが普通だが、草加には海はない。
「だけど草加には綾瀬川があるんですよ。そして首都に隣接している」
 東京から草加へ、川沿いに工場が移転してきたという。
「たとえば皮革は浅草から南千住にかけて行われていた産業だった。靴屋さん、かばん屋さん、革なめしなど。それが草加の瀬崎を中心に移転してきた」
 同様に入谷から荒川にかけて多かった家具屋が毛長川沿いの新里から遊馬にかけて移ってきたり、墨田とか荒川の機械加工、旋盤、切削の工場は工業団地を中心に草加市全般に来たそうだ。
 草加の河川、綾瀬川、毛長川、葛西用水、八条用水、伝右川が産業や街の形成に大きく関連しているのだ。浴衣も革も製紙やレンガ工場も水が必要。
「今の綾瀬川左岸広場はもともとは大阪窯業というレンガ工場だった。東京駅を作ったとき、たぶんこの工場の煉瓦も行ってるんじゃないか」
 レンガ工場が閉鎖されたあと、松下物流が入って、その跡地が草加の文化の重要な拠点、綾瀬川左岸広場となった。

高度成長からリーマンショックまで

 1963年、草加の青柳地区周辺に工業団地(工場が集められた地域)が完成した。埼玉県の工業団地は草加が第一号だという。企業がいっきに集まり、工業団地に関係する人も周囲に集まった。小俣さんの会社、東京製鎖株式会社が青柳に来たのは1969年だ。
 こうして高度成長期を経て、バブル経済まで産業が興隆し続けた。
 1973、4年頃、公害の問題が大きくなったときは、草加の工業界は自分たちでどうしたらいいか真剣に考え、解決に向けて取り組んだ。
「あのころは騒音、臭い、振動もあるし、住民から出てってくれと言われた。あれから企業は悪だという風潮がいまだに続いていますからね。今は公害を垂れ流しする会社なんてほとんどないのに」
 バブル崩壊、リーマン・ショックと、企業の受難が続いた。だが、草加の産業全体がいっきにしぼむことは避けられた。
「草加は企業城下町じゃないんですよ。大企業が1社あってそれにみんなくっついているわけじゃない。客先がばらばらだ。だからよその工業都市が落ち込んだときも、草加・八潮は落ち込みが小さかった」
 事業所数の推移を見ると、 1982年に1802件あったのが最多で、そこからじわじわ減少している。現在は約600件だという。

ありとあらゆる業種がある草加の産業

「草加ってありとあらゆる分野の産業がある。化学、接着剤や塗料もある。昔は軍需産業以外はすべてあるっていわれたくらい。業種別に見ると、出荷額がいちばん多い製紙関係でも20%ないんです。おせんべいを含む食品は10%いかない」
 草加のイメージではせんべいが半分占めるようぐらいに感じていた。うどん県を名乗る県のように「せんべい市」とは到底名乗れない。偏りなくまんべんなく散らばっていることが特徴なのだ。
「だから考えようによっては、なにか特殊なものを作りたいと相談されたら、あれはあそこ行って、それはあそこ行ってと、草加市内で割り振ることができるはず」
 草加市内の工場からの部品の組み合わせで、何か新しい製品を生み出せるかもしれない。
「実は会議所でもトライしているんですけど、うまくいかない。でもだれかまとめる人がいれば絶対できます」
 できるところからやろうと、草加商工会議所と市が協力して「うるおい工房」と「草加ものづくりブランド」を始めた。

街を活性化するには産業界の力が必要

 草加の街の特徴として、工場と住宅が入り組んで共存していることが挙げられるという。
 工場が地域と融和し地域から愛着を持たれるようにという思いから、「うるおい工房認定事業」が始まった。地域に開かれた事業所や優れた技術や製品を持つ事業所を「うるおい工房」に認定するのだ。
「補助金を出して、工場の周りをきれいに塗装し直したり、事務所を一般の人に開放したりする運動を推進した」
 ところで小俣さんの息子さん、小俣善史さんは趣味で二足歩行ロボットを作ろうとして、必要なねじを探した結果、浅井製作所と出会った。小俣善史さんが主宰するロボットプロレスは、今や草加の名物のひとつになっている。
「草加の人は今まで産業に目が向いていなかった。街を活性化するには産業界の力が絶対必要ですよ」
 小俣克彦さんは草加で暮らす人たちにこう呼びかけたいという。
「近くにものづくりの工場があったらぜひ興味を持って見てください。声をかけたら喜んで対応してくれると思います」