草生人バックナンバーテキスト

草加のすごい企業:2013年秋号

株式会社 菊池襖紙工場

芸術と産業をつなぐ会社

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 菊池襖紙工場は襖紙を印刷する会社だ。1948年に創業し、現在草加市新里に本社がある。
 社長の菊池義明さんは3代目。お父さんが創業者だ。
「小学校のころから後を継ぐように洗脳されていた(笑)。車が好きだったり機械のほうが好きだったりしたけれど、親父が襖紙屋なのでできないって、小学校のころの作文を見ると書いてある」と菊池社長。
 現在、月産100万枚を生産する能力を備えている。襖紙生産量では日本一。もちろんイコール世界一ということになる。
 襖とは、辞書的には、和室の仕切りに使う建具である。機能的で実用的なものだ。だが襖とは絵画でもある。
 菊池襖紙工場本社内のショールームにある実物の襖を見た。4枚1組の迫力ある壮大な絵画作品だ。
 草加の風景を描いた屏風も展示されている。松並木と太鼓橋。遠くにスカイツリーもある。
「これは夜バージョン。昼バージョンは草加市役所の市長公室にあります。お嫁入りしました」と菊池社長。
 デザイン室では美術大学で日本画を専攻した人など、画家、デザイナーたちが社員として働いている。彼らが企画し図案を描きデザインを起こす。
 平安時代の絵巻物で見られる、細かく切った金箔、銀箔をまき散らす「金銀砂子細工」も、社内で行われている。
 山本和久さん(企画部の課長)に金銀砂子の作業を見せていただいた。
 まず箔を細かく切っていく作業が繊細さを要求する。そしてその細かい箔を絵に撒いていく。意図と偶然がコントロールされ、みるみるうちに霧、雲、霧などの季節の情緒が表現されていく。社内で切磋琢磨して技術とセンスを磨いてきたのだろうと思った。
 菊池襖紙工場は芸術と産業をつなぐ会社なのである。

紙の壁紙は呼吸をする 

同社はまた壁紙も作っている。品目名は「紙壁紙」。「紙」がダブっている?
「国内で流通している壁紙のほとんどはビニールなんですよ。うちでやってるのは紙の壁紙です」と菊池社長が力説する。
 紙を使うメリットはなんだろうか。
「紙の壁紙は呼吸をする。ある程度湿度の調節もできるんです」
 また、塩化ビニールは壁紙にするために薬剤で柔らかくしているという。薬剤は長い間に空気中に発散する。そこに住む人の健康に悪い。
 紙壁紙は天然素材を使っているため、環境にやさしい。
 紙壁紙と襖、障子……。木と紙に囲まれた環境で暮らすことこそ、日本に適しているし、健康的だと、改めて感じ入る。

時代に対応していくために

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世の中から和室が減っている。
「どんな対応をするか考えて行かなきゃいけない。物を作る会社だからそれはできる。新しものを作り続け、その中からニーズに合うものが出てくればそっちの方向へ行くべきだと思う。これまでも変わってきた。これからも変わっていきます」
 時代に対応していくための方法のひとつとして、6年ほど前から菊池襖紙工場を中心として「Fプロジェクト」という企画を進めている。「F」はフスマのこと。
「どんどん襖が減っている時代、経師屋さん、表具屋さんも同じように少なくなっている。彼らが家業を残していける方法を提案しています」
 経師屋さん、表具屋さんとは、襖の張り替えや修理をする職人のことだ。
 菊池社長によると、もともと経師屋さん、表具屋さんは自分をPRしない傾向にあるという。そのため市民たちも襖はどこで張ってもらえるかわからない。
 畳屋さんの下請けをしているのが現状だ。
「看板を出しなさいとか、メニューや値段表を出しましょうとか、PRもしましょう、チラシも撒きましょう、と経師屋さんたちにアドバイスしたり情報提供したりしているところです」
 自宅の和室や押入れの襖を改めて見てみよう。もしも襖紙をもっと華やかなデザインやもっとモダンなデザインに変えたら、部屋はどう変わるだろうか。
 襖は自分で張り替えることができる。菊池襖紙工場の襖紙はホームセンターでも手に入る。また、毎年11月に開かれる商工会議所まつりにもここ12年ほど参加して、襖紙や障子を安く販売している。リピーターがいるほどの人気だという。
「5年も10年も貼りっぱなしにするんじゃなくてね、季節ごとには難しいとしても1年ごとに替えるとインテリアとしても楽しいと思いますよ」
 もし張り替え方がわからなかったら、「襖 張り替え」で検索して、近所の経師屋さん・表具屋さんを探してみよう。

株式会社 菊池襖紙工場
草加市新里町1355番地
TEL:048-925-1245

http://www.fusuma.co.jp/